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【川村エッセー:ときわぎ】健康管理の問題
先日、神戸市で行われた日本臨床スポーツ医学会総会に参加した。初日には、元プロ野球選手の清原和博氏のトークショーが開かれた。清原氏はPL学園高校時代から天才バッターとして活躍し、西武ライオンズに入団、新人王を獲得した。以後、巨人、オリックスに移籍したが、昨年、左ひざの故障が原因で引退した。トークショーに現れた彼は、その巨体の左あしを引きずって歩行し、いすに座りながらも常に左ひざをさすっていた。
彼は、2007年7月に神戸大学で、左ひざの骨軟骨移植術を受けた。スポーツ選手に対するひざの骨軟骨移植術は、小さい範囲であれば成功するケースもあるが、損傷範囲が広くなるほど手術成績は低下する。清原氏は、一見プロレスラーと間違えるような立派な体格をしている。外国人に負けない大きな体を作るため、野球には必要ないような余分な筋肉や脂肪をつけたため、体重過多となり、ひざにかかる負担が大きくなり、痛めてしまったと思われる。彼自身も自分の行ってきたトレーニング方法に間違いがあったことを反省していた。ヤンキースの松井選手も渡米してから体重が15キロ増えたようで、ひざの負担が増し、故障の一因となったと思われる。一度痛んだ関節の軟骨は、再生が非常に困難なので、今後の松井選手のひざもかなり心配である。
ひざは、体重を支え、歩行するためにとても重要な関節である。最近は高齢の方でもパークゴルフなどのスポーツ愛好家が増えているようである。末永く趣味のスポーツを楽しむためには、自分のからだがどの程度の健康状態にあるか、きちんと把握し、自己管理をする必要がある。そのためには、おかしいなと思ったらすぐに医療機関で診察、検査を受けることをお勧めする。
健康管理を怠ると、自分自身が苦しむのみならず、家族や職場にも迷惑をかけてしまうことになる。恥ずかしながら私自身においても、今年になり頚椎(くび)を痛め、高血圧を患ってしまった。まさに医者の不養生である。これらは日常の生活習慣に注意することによりかなり防げたはずであり、治療薬が必要となった今となっては大変反省している。世の中の多くの病気は、予防や早期発見により、悪化を防ぐことができる。あの時、注意しておけばと後悔しないよう、早めの検診をおすすめしたい。
北海道新聞 エッセー:ときわぎ 2009年12月5日掲載