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【川村エッセー:ときわぎ】ハイチ大地震に思う

2010年02月06日(土)

カリブ海に浮かぶ島国であるハイチに、大地震が発生して2週間が過ぎた。報道によると死者は20万人とも言われ、復旧にはかなりの時間がかかりそうだ。日本でも阪神・淡路大震災が記憶に新しく、決して人事ではない。日本は震災に対する経験と知識が豊富であろうからハイチの復旧に貢献できる点は多いと思われる。

日本の国際緊急援助隊医療チームがハイチに到着した18日に、アメリカ整形外科学会(AAOS)より私にメールが入った。AAOSは、12日の地震発生直後よりその情報収集に当り、現地で多数の負傷者がいる状況を把握し、会員にメールなどを通じてボランティアでの活動や寄付などを呼びかけている。その後も活動報告が2~3日おきに送られ、生々しい現地での悲劇が伝えられている。現在のところ182人の整形外科医が現地入りし、手術などの医療活動を行っている。あるグループは、到着後48時間以内に63人の手術を行い、それでもなお待合室に溢れている負傷者に、後ろ髪を引かれる思いで帰国したと述べている。

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ハイチ大地震では、負傷者の多くが整形外科的外傷のようだ(日本国際協力機構によると受診者の67%)。感染による死亡を防ぐためにも手、足の切断術が必要なことが多い。国際非政府組織(NGO)「国境なき医師団」のある医師が、日本の医療体制を評してこう言っている「日本の医師は消毒して包帯を巻いているだけ。感染症が悪化して、死なせてしまう。時間がかかっても切断などの手術をして、少ない患者だけでもしっかり治療すべきだ」。日本の国際緊急援助隊医療チーム(総勢25名)は帰国したが、その中に手術ができる整形外科医や骨折の処置ができる柔道整復士など何人いたか不明であるが、不足していたのではと推察される。

残念ながら、未だに日本整形外科学会からは、ハイチ大地震についてのコメントはない。もし呼びかけさえしてくれたら、志をもって救助にかけつける整形外科医は少なからずいたはずである。将来、我が国を襲うかもしれない大災害や有事に対し、国民の安全を守るため準備が必要であり、ハイチ大地震から学ぶ点は多いはずで、今後も注視していきたい。
 

北海道新聞 エッセー:ときわぎ 2010年2月6日掲載

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