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【川村エッセー:ときわぎ】関節リウマチへの挑戦

2011年02月18日(金)

関節リウマチは、免疫の異常により関節の腫れや痛みを生じ、それが続くと関節の変形をきたす病気である。全国に60~70万人の患者さんがいると言われている。人口の約0.5%に発生すると言われているので、北見にも約600名程度の患者さんがいると推察されるが、実際にはもっといるのではと感じるほど、日常診療でよく見かける病気である。10年以上前までは関節リウマチに良く効く薬が少なく、患者さんの関節が時間とともに破壊されていくのをただ眺めるしかない、悲しい状況であった。

 

しかしながら、ここ20年間で関節リウマチの新薬の開発が目覚しく進み、関節破壊を防げることが現実となってきた。新しい治療薬は、現在5種類ある。日常診療で実際にそれらをすべて使用しているが、いずれも関節の炎症を抑えるかなりの効果があり、関節破壊の進行が食い止められている例が多く見られる。それらの新薬だけでは不十分な場合、手術を併用することで、多くの患者さんの関節の痛みを軽減できており、一昔前を振り返ると隔世の感がある。

【川村エッセー:ときわぎ】関節リウマチへの挑戦

このような医学の進歩により、関節リウマチの治療は今後も進むのであろうが、実際に患者さんに接していると、教科書には載っていないような不思議な出来事に遭遇することがある。ある60歳代の女性で、関節リウマチに長年苦しんでいる患者さんがいた。いくつも薬を組み合わせても、なかなか病気をコントロールできず困っていた。ある日、その方がニコニコと笑顔で診察室に入ってこられた。不思議なことに関節が全然痛くないそうである。どうしたのか聞いてみると、1週間くらいひどい下痢でろくに食べることができず、体重も5キロほど落ちたそうなのだが、実際血液検査のデータを見ると、高かった炎症反応が完全に正常化していた。結果オーライなのかもしれないが、2人で手を取り合って喜んだものである。

 

しかし、人生とは無情なものである。せっかく長年の病気から開放されつつあったそのすぐ後に、交通事故に会い、無念ではあるがお亡くなりになってしまった。今でもよくなったと喜んでおられた笑顔が目に浮かんでくる。医学が進み、新薬は病気から人類を開放してくれるかもしれないが、ひとりひとりの生き様まで変えることはできないのであろう。

 北海道新聞 エッセー:ときわぎ 2011年2月18日掲載

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