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【川村エッセー:ときわぎ】中高年のスポーツ医学

2011年04月18日(月)

東日本大震災のような悲劇は、いつ我々の身にも降りかかるかわからない。多くの尊い命が失われた教訓から、地域医療のあるべき姿が再考される。すなわち、高度先端医療は被災地においては無力で、電気、水道、ガスがなくても最低限の医療が行えるような災害医療が必要になってくるという点である。災害時に対応できるよう、複数の病院が普段から備える必要があるし、足りない面があれば、耐震対策など、民間病院であっても行政が金銭面も含めて支援すべきであると思う。いわゆる地域拠点病院のみで、広域な災害に対応することは困難であり、民間病院、医院をふくめた地域の災害対策・支援を今後最優先すべきである。

ところで・・・今回の大震災では、体が思うように動けず、逃げ遅れてしまった方も多かったのであろう。年齢とともに人間の運動能力は低下していくが、できる限り自分の身を守るためにも、健康を維持して行くことが大切である。

【川村エッセー:ときわぎ】中高年のスポーツ医学

高齢者が転びやすい原因には、単に筋力の衰えだけではなく、視覚が低下し、感覚の神経が鈍くなり、バランスを崩しやすくなることなどが大きく関わってくる。筋力や神経の部分はある程度改善することができるので、歳だからとあきらめないで継続することが大切である。加齢とともに、呼吸機能、循環器の機能、腎臓の機能などが落ちてしまう。その中で、高齢者によく見られる“背中が丸くなった”状態である円背(えんぱい)は、呼吸機能を低下させてしまう。これは、骨粗しょう症による脊椎圧迫骨折が原因であることが多いが、日ごろ肩甲骨から背中の筋肉を鍛えていないことにより、少しずつ悪化することがある。日ごろから背筋をのばした生活を送ることが予防に重要である。

姿勢を正すことで私がお勧めするのは、相撲の世界でよく行われる“腰割り”という運動である。これは背中とすねをまっすぐに維持しながら、股関節を開いた状態で腰を落としていく運動である。普段の生活では鍛えられない筋肉を刺激することができ一般の方でも簡単にできるのでぜひ試して欲しい。高齢化社会を健康に生きていく為に、自分自身の健康管理が大切で、筋肉や関節などの運動器を日々鍛えておく必要がある。中高年にとってのスポーツ医学は、高齢化社会の柱として重要と思う。

 北海道新聞 エッセー:ときわぎ 2011年4月12日掲載

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