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【川村エッセー:ときわぎ】骨折は、受け身で攻める

2011年11月29日(火)

今年もそろそろ骨折が増える季節になった。例年だと、路面に氷が張って滑りやすくなった日には、転倒、交通事故が多発し、一日に20件以上もの骨折を診なければならないことある。朝から覚悟がいる季節である。 

さて、数年前、厚生労働省の長寿科学総合研究事業で、高齢者の転倒を予防する方法を考える全国的なプロジェクトがあり、オホーツク地区からは私が唯一協力したのであるが、その結果が発表された。全国で計1965名の75歳以上の方から情報を収集した。方法は、75歳以上の男女で、目を開けての片足立ちを16秒以上できなかった方を対象として、6か月間、目を開けての片足立ちを両足ともに毎日1分間1日3回行った群と、行わなかった群に分けて、骨折が予防できるか?というものであった。整形外科学会では、この運動をダイナミックフラミンゴ療法と名付けている。 

【川村エッセー:ときわぎ】骨折は、受け身で攻める

 結果は、このダイナミックフラミンゴ療法を6か月以上続けると、目を開けての片足立ちの持続時間は延長するが、残念ながら転倒する頻度に変化なく、また股関節の骨折の発生頻度に差はなかったということだ。この研究の問題点は、持病が無く健康な方は対象としていないことであり、この研究結果に悲観することもないが、訓練としての転倒予防は現実としてかなり困難であると言える。 

転倒予防教室で、筋力を鍛えても、転倒は起きてしまう。そこで、転倒は仕方ないとして、転倒の衝撃をすこしでも和らげる工夫が必要になる。運動ができる方であれば、理想は、柔道や合気道の受け身を習得することかもしれない。私は以前、スキー中に大転倒した患者さんを診たが、以外と軽傷で済んで驚いた経験がある。その方は、昔柔道をやっており、転倒した際、受け身をとって身を守ったようだ。受け身は、習得すればいつでも使えるわけではなく、起こりうる転倒を有る程度自分で想定して、心の準備をしておく必要がある。可能であれば自分で転倒する方向を有る程度決めておくのも良いと思う。前に倒れるのか、後ろに倒れるのか、横か・・・自分で得意な受け身の方向を決めておき、万が一転んだ場合、最小限のダメージで済むように準備しておく。このような受け身を心がけた積極的な転倒対策も骨折予防のひとつの手かと思う。

 

 北海道新聞 エッセー:ときわぎ 2011年11月29日掲載

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